1.椎間孔とは?

最近、椎間孔や、椎間孔狭窄症という言葉を、よく耳にされるかもしれません。脊椎の病気で、見逃されやすいものの一つですが、しかし、では椎間孔って何なのか、といわれると、なんとなく漠然とした理解しかお持ちでないかもしれません。

このページでは、椎間孔について、以下の順番で、、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。

  1. 椎間孔から出る脊髄神経について
  2. 神経の圧迫と、症状の関係について
  3. 椎間孔狭窄症とその治療について

2.人間の体は脊髄神経に支配されている。

人間の背骨は、脊椎骨というブロックの形をした骨が積み重なってできています。 頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個あります。

この隣り合った脊椎骨の間には、椎間孔という穴があいていて、そこから、脊髄神経という神経が出てきます。脊髄神経は、左右一本ずつあります。

ですので、頚椎、胸椎、腰椎を合わせると、合計25本の脊髄神経、左右合わせて50本の脊髄神経があります。(仙骨からの脊髄神経も合わせると、左右で60本程度になります。

人間の体は、すべて、この脊髄神経で支配されています。右側の椎間孔から出る脊髄神経は、右半身を、左側の椎間孔から出る脊髄神経は、左半身を支配します。筋肉を動かす命令は脊髄神経を通って伝えられ、体の感覚の情報も脊髄神経を通って伝えられます。

さて、この脊髄神経には、それぞれ自分の縄張りがあります。それぞれの椎間孔から出た脊髄神経は、各自の領分をもっていて、隣の脊髄神経の領分を犯すことはありません。

大まかにいうと、頚椎の椎間孔から出た脊髄神経は、腕の領域を支配し、腰椎の椎間孔から出た脊髄神経は、脚の領域を支配します。さらに、一本一本の脊髄神経は、腕や脚の一部分を支配します。例えば、頚椎の6番の椎間孔から出る脊髄神経は、手の親指あたりの感覚を伝え、7番の神経は、中指あたりの感覚を伝えます。

このように、人間の体は、椎間孔から出る脊髄神経によって、たくさんの領域に分けられているのです。

3.神経の圧迫は、支配領域の症状を出す

さて、この脊髄神経は、いろいろな原因で傷害されます。椎間孔が狭くなってその部分で神経が圧迫される椎間孔狭窄症も、その一つです。

神経が圧迫などで障害されると、症状は、その神経の支配領域に出現します。つまり、脳は、その神経が受け持っている体の部分に異常があると、感じるわけです。

先ほどの例でいうと、頚椎の6番の神経が圧迫された場合は、脳は、その圧迫のある椎間孔の部分に痛みを感じるのではなく、神経の行き先である親指のあたりに痛みやしびれを感じるのです。

4.椎間孔狭窄症と神経症状

いかがですか?椎間孔の狭窄によって起こる症状のことを、理解できたでしょうか?

誰でも、年を取ると、背骨は変形してきます。椎間孔も、背骨の変形の影響で狭くなりやすくなります。そうすると、その部分で神経が圧迫され、その神経の支配する領域に症状がでます。

多くの場合に、腕や脚の痛みやしびれの症状が出てきます。この病気は、骨の変形によって起きてくるものなので、基本的には、薬で治すことはできません。薬でできることは、症状を和らげることだけで、根本的に治すということはできないのです。

しかし、神経の圧迫されている椎間孔を正確に診断して、侵襲の少ない手術で椎間孔を拡げ、圧迫をとることができれば、症状は劇的に改善します。

そのためには、特別な技術を持った専門医の診察を受ける必要があります。なぜなら、この病気は、診断も治療もとても難しいからです。

椎間孔はとても小さいので、ふつうのMRIを撮っただけでは、診断できないことが多いのです。微妙な所見は、特別に工夫した撮影方法でMRIを撮らなければ、見逃されてしまいます。

手術も同様です。小さい椎間孔を、神経を傷つけずに、必要最小限の侵襲で拡げるには、手術用の顕微鏡を使った熟練した技術と経験が必要です。

  1. 椎間孔とは背骨から脊髄神経が出てくる穴のことです。
  2. 各脊髄神経は、体の一部を自分の領域として支配します。
  3. 神経が圧迫されると、症状は、神経の支配している領域に感じられます。
  4. 椎間孔の診断と治療は難しいですが、専門医の治療で症状は劇的に改善します。

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