足の裏のしびれでお困りのかたは意外と多いかもしれません。この投稿では、足底のしびれの原因となる病気、特に足根管症候群とその問題点、そして見逃されやすい疾患である腓骨神経絞扼について述べたいと思います。

  1. 足底のしびれと足根管症候群
  2. 足根管症候群の問題点
  3. 見逃されやすい、腓骨神経絞扼
  4. 腓骨神経絞扼の診断
  5. 腓骨神経絞扼の治療
  6. 結論

足底のしびれと足根管症候群

足底のしびれを起こす病気としては、足根管症候群というのが有名です。これは、足首の内側の靭帯の下を足底神経が通る部分で、神経が圧迫されて起こる病気です。このように、末梢神経が、からだのいろいろな部位で圧迫されて起こる病気は他にもたくさんあり、それらはまとめて、神経絞扼と呼ばれています。

足根管症候群の問題点

足底のしびれというと、足根管症候群が疑われることが多いのですが、この病気の診断と治療には大きな問題があります。端的に言うと、診断が難しいということです。MRIなどの画像を撮っても、神経の圧迫はそれほどはっきり分かりませんし、筋電図などの、神経を電気で刺激して行う検査でも、はっきり診断することは困難です。結果として、誤診につながることが多いと思われます。診断が間違っていれば、手術をしても良くなるはずがありませんね。

私自身の経験では、私は診断が確定できなければ手術をしないようにしていますので、今までに足根管症候群の手術をしたことは、1例のみです。しかしながら、足根管症候群の手術をたくさんやっている先生にお聞きしても、手術の成功率はせいぜい50%程度だということです。それでは、手術をお勧めすることはためらわれますよね。

見逃されやすい、腓骨神経絞扼

ところが、よく似た病気で、腓骨神経絞扼というものがあります。これは、図に示したように、膝の外側の骨の出っ張りの少し下あたりで、そこを走行する腓骨神経が圧迫されて起きる病気です。実は、この腓骨神経は、最終的に足先の皮膚に行っており、圧迫されると足底部のしびれを起こします。この病気は、足底のしびれの原因としてはあまり認識されておらず、見逃される可能性が高いと思われます。

腓骨神経絞扼の診断

幸いなことに、この腓骨神経絞扼は、足根管症候群と異なり、診断はかなり確実に行うことができます。上に述べた圧迫部を指で押すと、強い痛みが誘発されます。この部位を、圧痛点と呼びます。そして、この圧痛点に局所麻酔薬を注射して、神経をブロックしてみると、足底のしびれの症状が明らかに改善することが確認できます。また、この病気に関しては、筋電図での診断方法が確立しているので、筋電図を使って、より客観的に診断することができます。

腓骨神経絞扼の手術

腓骨神経絞扼は、簡単な手術で治すことができます。簡単といっても、経験のある脳神経外科医が行えば、ということですが。手術は局所麻酔で行います。下腿の圧痛点のところの皮膚を3cm程度切開し、手術用の顕微鏡を用いて、圧迫されている神経をみつけます。顕微鏡下に、丁寧に神経周囲を剥離して、神経の圧迫を取り除きます。手術がうまくいけば、直後から症状は劇的に改善します。危険性もほとんどない手術です。外来手術も可能ですが、いまのところ当院では3日程度の入院で行っています。

結論

足底のしびれは厄介な病気で、なかなか診断がつけられない場合が多いかもしれません。足根管症候群の診断は非常に難しいので、手術を受けるかどうかは慎重に考える必要があるでしょう。腓骨神経絞扼は、いままであまり足底のしびれの原因としては認識されていませんでした。診断は比較的確実に行え、手術の成功率も高いので、この病気を疑う価値は大いにあると思われます。