先週、椎間孔狭窄症の患者さんの手術をしました。患者さんは77歳の女性で、長年腰痛に苦しんでおられ、腰痛のために長距離の歩行ができず、生活に支障がある状態でした。いくつかの有名病院を受診されていましたが、診断がつかず、私のところに来られました。
腰椎MRIを、私のところで工夫した、特別なシークエンスで撮影したところ、腰椎の椎間孔狭窄症が疑われました。さらに、神経根ブロックで診断を確定し、最終的に、手術をお勧めすることができました。
腰椎椎間孔狭窄症は、下肢の症状があることが多いのですが、私の経験では、腰痛だけの場合も多く、その場合は診断が困難になります。外科医によっては、腰痛だけでは手術をしてはいけないと考える場合もあります。
私は、10年以上、椎間孔狭窄症の手術治療を研究してきました。その結果、現在では、診断と治療において、誰にも負けないという自負を持っています。専門医といえども、かならずしもこの疾患を診断、治療できるとは限らないということは、この患者さんの場合にも証明されていますが、同様なケースは、過去にも複数回経験しています。
さて、この患者さんですが、幸いなことに手術はとてもうまくいき、手術後に腰痛は著明に改善しました。翌日から歩行を開始し、腰を前かがみにしていた姿勢も、手術後は、腰がまっすぐな、良い姿勢になっています。手術結果にとても満足されており、少しリハビリをして、週末には自宅に退院される予定です。
手術には、顕微鏡を用います。5cmくらいの皮膚切開で、椎間孔に達し、ソノペットという、超音波骨メスを用いて、神経を圧迫している骨を慎重に削除します。実際に削除される骨の量は、小指の先程度ですので、脊椎の安定性に影響を及ぼすことはありません。
この方法で、過去100例以上の椎間孔狭窄症を手術してきました。全体に成績はとても良好で、長期間にわたって、改善が維持されています。下は、80名の患者さんの追跡調査の結果です。SF-36という、生活の質を測定するアンケートの点数をグラフにしていますが、手術直後から著明に改善し、効果が5年間維持されていることがわかります。
このような方法を使えば、腰椎を固定する必要性はありません。多くの施設で、たくさんの腰椎固定術が行われています。しかし、本当にそのような手術がよいかどうかは、医師の間でも、疑問を持つ人は少なくありません。一度、固定をしてしまえば、それを元に戻すことは不可能です。私のところにも、他院で腰椎の固定をされて、その隣接椎間の変性が原因で、ひどい腰痛を起こした方が多くいらっしゃいます。原因を特定して、除圧術を行うことで、症状を改善することはできるのですが、一度固定してしまった骨を元に戻すことはできません。腰椎の固定術は、慎重にお考えになることをお勧めします。
お尋ねさせてください。77才女性です。昨年10月半ば頃から前傾姿勢が強くなってきたことが気になって整形外科を訪ねたのですが、骨粗しょう症の投薬を受け改善が見られたところで、後はスクワットを勧められて治療は終わりました。ところがその帰宅後ストレッチをした途端右脚股関節がぎくっとなって、その後痺れと痛み、間欠跛行に悩まされるようになりました。整形外科専門の大きな病院で、MRIとレントゲン検査を受けましたら、L4/5に辷り症による狭窄があるということでブロック注射を受けましたが、効果乏しく2週間おきに計10回のブロック注射と、タリージェ、セレコックス、その他の投薬を受けました。介護をしている身でもあり、何とか手術だけは避けたいと、自身でも運動による保存療法関係書を読んでリハビリに努めました。しかし、症状はどちらかと言えば悪くなっており、ひどい時は10m位で立ち往生しますし、首がひどく前傾してきております。ただ、調子のいい午前中などには、遠出できる日もあります。主治医は除圧ではだめ、固定するしかないとおっしゃるのですが、固定だけはしたくない、と悩んでおりますが、ほとんどの病院は固定あり、と謳っておられます。固定を渋る私に、つい先日主治医から貴方の狭窄は、椎間孔狭窄ですよ、と告げられました。辷り症と椎間孔狭窄では、固定は避けられないのでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、お教え下さいませんでしょうか。
紹介状とデータはいただけますが、そちらにうかがわなくてはいけませんでしょうか。本当に勝手なお願いで恐縮なのですが、遠方でもあり、できましたらまずは返信でお教えいただけませんでしょうか。どうかよろしく御願いいたします。
コメントをありがとうございました。
腰椎すべり症に椎間孔狭窄が伴うことは、よくあります。私のところでは、すべて、顕微鏡的除圧術を行っており、固定は行っていません。成績は良好と思います。
ただ、ほとんどの施設では、固定が行われていると思います。
すべり症や側湾症があるケースでの椎間孔の除圧術は、技術的にかなり難しくなり、私も、何年もかけて術式を改良してきました。今では、かなり自信を持ってお勧めすることができています。
そういう次第ですので、遠方ということですが、なかなか気軽にお近くの医師を紹介するというわけにもいきません。
MRIの画像をお送りいただければ、拝見して私の意見をお伝えすることはできます。
こちらでの手術をご希望でしたら、1週間程度の入院で可能です。
張 漢秀
突然に失礼します。お訊ねします。
横浜市在住の67才男です。
3年前に腰痛発症し病院クリニックを複数受診するも明確な診断出ず。この2年は神経性腰痛かと診療内科で投薬を受けておりました。
この3月から腰痛がまた激しくなり近隣クリニックを受診。
数回の診察治療後にクリニックの先生から、腰痛と坐骨神経痛精査の為のMRI撮影を受けましょうと病院の紹介を受けました。
お訊ねです。
放射線読影医のからの報告書の診断と所見は、下記※の通りでした。
これこそは、張先生が解説をされている腰椎椎間孔狭窄症と同義でしょうか?
※変形性腰椎症 L5/S1レベルにおいて変形性変化に伴う左椎間孔の狭小化が認められます。左L5神経根への影響が疑われます。
先日、3年前に診察を受けた専門性の高い病院にて、読影医報告書を持って再診を受けました。変形性腰椎症、脊柱管狭窄症あり。傷み激しく続くようならば固定の手術が必要との診断でありました。コルセットを作成して頂き、1か月後の再診となりました。
読影医の報告にある椎間孔のの狭小と脊柱管狭窄は同じものだろうか?2ヶ所あるのだろうかとはお聞きできないまま診察を終えて戻りました。
帰宅しネット検索をしましたが、固定術への不安は消えません。そんな中で張先生のブログを知りました。
また、整形外科と脳神経外科では術式も考え方も異なること、また近年になって腰椎椎間孔狭窄症を脊柱管狭窄症とは別項にして説明する病院が徐々に増えてきていること、固定術は必ずしも標準的な治療ではないことなども知りました。
大学の医療連携室に診察の依頼のメールを致しました。紹介状とMRIは手元に準備ししております。
ご診察の程、よろしくお願いします。
日々、私が痛いの歩きにくいのと愚痴を言うのを聞いてくれている妻に、愚痴を言わずに済むようになりたいと願っております。
コメントをありがとうございました。
腰椎椎間孔狭窄症の手術は、200例を越え、様々なノウハウを蓄積して、成績も向上しています。
いまでは、固定術は必要ないと、自信を持って言うことができます。
外来でお待ちしています。
張 漢秀
初めまして。アドバイスをよろしくお願いします。
腰椎骨性椎間孔狭窄症と診断されました。
激しい痛みまではありませんが 右側を中心に痺れが足先からふくらはぎ もも お尻にかけて場所は移動しますが常時あります。
かかったお医者さんは 固定術しかやっていないようで 入院二週間と言われました。
先生の記事を見せていただいたら 固定しなくても良いとの事
先生の削る手術だと入院期間はどのくらいになりますか?
また私は名古屋なので何度も通うのが困難ですが 何回位通わないといけないでしようか? 遠方でも大丈夫でしょうか?
M.K.さん、コメントをありがとうございました。
椎間孔狭窄症の手術の場合、入院期間は、1週間程度です。遠方の方の手術も行っています。
今は、コロナの問題があって、入院前にPCR検査をしていただく必要があるため、最低2回、外来に来ていただく必要があります。
受診ご希望でしたら、「Contact」にある私のメールアドレスまでご連絡ください。
初めまして
2年ほど前から右側の股関節に痛みが手始め、徐々にお尻 鼠径部下腿にまで痛みが広がり、夜間痛などの症状が出てきました。
何件か整形外科に行きましたが、右側に少しヘルニアがあると言われるぐらいでした。カイロプラクティック 鍼 ブロック注射 薬などいろいろなとことを試しましたが、全然効果がありません。
どんどん痛みが強くなり、歩くのも辛くなってきたので、なんとか原因を探さなければと思い、今度は脊髄専門のところに行きました。
その結果、椎間孔狭窄症の疑いがあると言われました。とりあえず消炎効果のある薬を処方されましたが、効果ぎなければ最終的には手術になるそうです。
ボルトを入れる固定手術と言われたのですが、固定手術はなんとか避けたいのです。いろいろ調べて、自由診療で良いところもあるのですが、高くてとても手がでません。そしてようやくこちらの先生の手術法にたどり着きました。
遠方なのですが、受診希望です。
宜しくお願いします。
センター
A. S. さん
コメントをありがとうございました。
木曜日の東海大医学部付属病院の外来を午前11時までに受診していただければ、拝見いたします。
紹介状があれば、予約もできますので、下記アドレスをご参照ください。
https://www.fuzoku-hosp.tokai.ac.jp/patient/outpatient/first/appointment/
張 漢秀
初めまして、一年前位から少しずつ違和感があり2月位から右側お尻から太腿、ふくらはぎ、かかと、と痺れがあり、歩行も、あまり長く歩けず休みながらで、階段が、手をつきながら上がったりします。近くの整形でMRIを撮りました、脊柱管の神経の出口が狭くなり、手術なら関節を壊すから固定術ですと言われました。10年前は、左側のヘルニアと狭窄症で、本管近くだから、脱力がひどく、徐圧手術でした、まだ足を上げると、つったりしますが。MRIの画像のCD見たいのは、1番目の病院からいただき手元にあります。北海道では固定術ばかりのようです。出来れば、固定術は、回避したくて、遠方なのですが、固定術じゃない手術は可能ですか?費用は?保険は効きますか?
お書きいただいた内容だと、椎間孔の狭窄のように思われますが、実際の画像を見てみなければ何とも言えません。お近くに信頼できる医師がみつからないようでしたら、北海道で何人かご紹介はできるかもしれません。もちろん、私のところに来ていただいてもいいですが。1週間程度の入院が必要ですが、もちろん保険がききますし、高額医療費の制度を使えば、おそらく最終的な自己負担額は10万円程度になるかと思います。ひつようでしたら、またお問い合わせください。
突然失礼します。
1年半程前より下垂足の症状があり近隣の脊椎疾患専門の病院で、腰部脊柱管狭窄症の診断を受け、3ヶ月前に2回にわたり手術をしました。しかし、下垂足の症状は改善されていません。腰部椎間孔狭窄症の可能性はあるでしょうか?お忙しい先生に、このような質問をしてしまい、大変恐縮です。
主治医の先生は、可能性としは、少ないと言われましたが、椎間孔狭窄症の検査はしておりません。
椎間孔狭窄症の可能性があるのであれば、遠方ですが、受診希望です。どうか宜しくお願いします。
しばらく更新を怠っており、ご質問に気づくのが遅くなりました。申し訳ありません。
腰椎の手術をされたとのことですが、固定をされたのでしょうか?
椎間孔狭窄の可能性はあると思いますが、詳細は画像をみてみないとなんともいえません。
画像のCD-ROMを郵送していただければ、拝見してご返事することは可能です。
もちろん、外来を受診していただいてもかまいませんが、遠方とのことなので、強くお勧めするのはためらわれます。
張 漢秀
以前から左の脊柱管狭窄でしびれがあり血流改善剤服用していました。3年前から右の腰痛が出てきて、2年前に診療所から紹介して頂き地元の比較的有名な整形外科病院に通うようになりました。初診医の診断はMRI見て即座にL5とS1の右椎間孔狭窄と。昨年4月に酷い痛みが出て硬膜外や神経根ブロックするも数時間しか効果なく、また運動麻痺も出てきたため5月に入院し固定術と人工骨移植?をしました。年末までは緩やかに改善していましたが、それ以後の改善はなく、一年後のMRIも問題ないと言われていました。骨癒合を期待していましたが、2週間前から、比較的急に右下肢の筋力低下、周囲径見ても左右あります、や足裏のしびれ、臀部の長時間の座位での鈍痛が出てきました。初診医と執刀医は別別ですが、椎間孔狭窄は固定術で改善するものでしょうか、また開窓術を今度するなら昨年した固定術の影響は如何でしょうか、またその場合手術時間、入院期間、デスクワークできるまでどれぐらいかかりますか?ご教授頂ければ幸いです。
実際に診察をして、画像をみてみなければ、何とも申し上げられませんが、症状の原因となるような神経の圧迫がどこかにあると思われますので、それを、MRI等の画像で診断することが第1になると思います。固定術後に症状が再発した方を、よく外来で拝見します。神経の圧迫部位がはっきりしていれば、顕微鏡的除圧術を行っています。固定のスクリューなどが邪魔になりますが、対応は可能です。3−5時間程度の手術で、1週間程度の入院が必要です。
ただし、一度固定してしまいますと、それをもとに戻すことはできません。固定後の隣接椎間への影響は、除圧術後も残ることになりますので、固定術後の患者さんへの除圧術の成績は、通常の除圧術の成績より劣ることになります。
なにか、またお役に建てることがありましたら、メールにてご連絡ください。
初めてメールさせて頂きます。68歳主婦です。 数年前から左臀部から足外側にかけて脱力感があり痛みはそれ程なかったのですが、ここ2年程前から腰から臀部、太もも、ふくらはぎ、足裏、甲まで痛み、痺れがではじめ脱力感で思うように家事も出来なくなりました。数件の整形外科回りましたが、画像上は問題ないといわれました。今年4月大学病院の脳神経内科を検査入院したところ
腰椎椎体に骨棘形成がある。
L45、L5S1レベルでは椎間板の高さが低くなっている。
L34、L45、L5S1レベルが椎間板が軽度膨隆している。
左側のL45レベルの神経孔は狭窄している。
変形性腰椎症と診断されました。そこでは血流改善の薬や痺れをとる薬等を処方されましたがいっこうによくならず毎日痛み痺れ苦しんでいます。立っているのも座っているのもつらいです。
左側の肩から手指にかけても痺れがあったので脛椎のMRIも撮っていただいたところ
T2強調像軸位断T7/Th1椎間孔近傍に約4mmの嚢胞像を認める。神経根嚢胞と思われる。これにより椎間孔は狭小化している。
椎間板変性を認める。
硬膜嚢の圧排は指摘できない。右C8の神経根嚢胞疑い。と診断されました。
最近では頭痛もあり辛いです。
大学病院でのMRI画像があります。
何とかもう一度元気になりたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。
通常のMRI撮影では、神経根の圧迫がはっきりわからない場合がありますので、私のところでは、1mmの厚さで細かく断面を切って診断するようにしています。
MRI画像をお持ちでしたら、コンピューターでアップロードしていただいて、拝見することができます。ご希望でしたらアップロード先をメールにてご連絡します。
難しいようでしたら、CD-Romを郵送していただければ、読影して返送いたします。
私の外来を受診できるようでしたら、当日にMRIを撮影して、結果をお話することができます。