脊椎の手術を考えているが、どのタイミングで受けるべきか迷っている、いう方も多いのではないでしょうか?この論考では、脊椎手術のタイミングについて考えてみました。ご参考になれば幸いです。
- 手術の適応を決める要素
- 手術の利益とリスクは外科医によって異なる
- 手術の利益とリスクは手術方によっても異なる
- 私の場合
手術の適応を決める要素
脊椎手術をやったほうが良いかどうかは、手術の利益とリスクを天秤にかけて決めることになります。手術によって痛みがなくなったり、歩けるようになったり、という大きな利益があれば、手術を受けたほうがよいということになりますが、その一方で、その手術に大きなリスクが伴うということであれば、果たしてどちらが良いのか、という問題になります。
ですので、手術に大きなリスクが伴い、得られる利益の期待値も小さい、という場合は、ぎりぎりまで手術をせずに様子をみて、いよいよどうしようもなくなったときに、手術を勧める、ということになります。
一方で、手術の利益の期待値が大きく、リスクも小さい、という場合には、比較的軽い症状であっても、患者さんの日常生活が障害されていて、患者さんが希望されるのであれば、手術をお勧めすることになります。
手術の利益とリスクは、外科医によって異なる
手術の利益も、リスクも、ケースバイケースで異なりますので、それを評価するのは、その手術を行う外科医ということになります。外科医は、その患者さんに手術を行うことでどれだけの利益が得られるか、そしてその手術にはどの程度のリスクが伴うかを、自分のこれまでの経験をもとにして評価します。
つまりそれは、手術の利益とリスクの評価は、各外科医によって異なる、ということを意味します。豊富な経験を持つ有能な外科医であれば、手術によって得られる利益の期待値も大きいでしょうし、リスクを回避する能力も高いはずですから、手術のリスクも低くなるでしょう。その一方で、まだ経験も浅く、技術も未熟な外科医であれば、利益の期待値も低く、リスクも高くなる、ということです。
手術の利益とリスクは、手術法によっても異なる
また、当然のことですが、手術法が異なれば、手術の利益とリスクも異なってきます。我々の例で言えば、肉眼で手術をするのと、拡大された明るい術野の顕微鏡で手術をするのでは、手術の確実性と安全性は大きく異なります。内視鏡の手術と顕微鏡の手術を比べれば、単眼で限られた道具で行う内視鏡手術よりは、両目でみて道具も自由に使える顕微鏡の手術のほうが、安全性が高いかもしれません。
ですので、外科医の特性(手術の方法)によっても、同じ患者さんで、手術を勧めるか、勧めないかは、違ってくるということです。
私の場合
私自身は、現在では自分の技術に自信を持っていますので、比較的症状の軽めの患者さんでも、その症状で患者さんが本当に困っておられ、なんとかして治したいと思っておられる場合には、手術をお勧めしています。
私の外来での経験では、手術をすればとてもよくなると思われる状態なのに、何年もの間手術を受けずに、症状で苦しまれている、という患者さんをよく拝見します。手術後に、「こんなに良くなるのだったら、もっと早く手術を受ければよかった」とおっしゃっていただけることもしばしばです。
もし、今、脊椎の病気で苦しまれている方がいらっしゃったら、上記を参考にしてみて、手術のタイミングを検討してみていただければ幸いです。