脊椎の手術と聞くと、「こわい」というイメージをお持ちの方がおおいようです。つまり、脊椎手術の合併症がこわいということだと思います。しかし、ただ漠然と「こわい」と思っているだけでは、正確な判断ができません。ここでは、脊椎手術の合併症について、できるだけわかりやすく解説したいと思います。
1.脊椎手術の合併症にはどんなものがあるのか?
脊椎には、脊髄や神経が通っており、これらが手術お際に損傷されると、手足の麻痺、感覚障害、排尿障害などのが起きます。これが、いちばんこわい合併症でしょう。他にも、脊髄を包んでいる膜に穴が開いて、脊髄液が傷口に漏れてくる、髄液漏や、最近の感染、多量の出血による状態の悪化、手術後の出血による脊髄の圧迫、など多くの合併症があります。
手術ですので、合併症をゼロにすることはできません。そう考えると、「こわい」と思われるのも無理はありません。しかし、これらは、万一の場合の話であり、一つ一つを数え上げると、たくさんの合併症がありますが、実際にこれらが起きる確率は、おおむね低いとかんがえて間違いありません。
2.脊椎手術の合併症の頻度は?
「おおむね低い」と、あやふやな表現をした理由は、合併症の頻度はいろいろな要因で異なるからです。
(1)合併症は手術の種類によってことなる
一言に脊椎の手術といっても、最もリスクの高い、髄内腫瘍の摘出術から、比較的リスクの低い、椎間板ヘルニアの摘出術まで、さまざまなものがあり、一概に論じることはできません。ケースバイケースですので、手術のリスクについての担当医の説明を、納得いくまで聞かれることが大事です。
(2)合併症は術者の技量によって異なる
当然のことながら、合併症の頻度は、術者の技量によって異なります。手術前には、これを確認したいところですね。しかし、医師に面と向かってそのようなことを聞くのはとても勇気がいるかもしれません。
しかし、そのような質問は、別に失礼でも何でもありませんので、思い切って聞いてみることをお勧めします。私自身は、いままで、経験が少ない手術の場合には、正直にそのようにお話ししてきました。そのような質問を受けて、怒るような医師であれば、手術をうけるのを再考されたほうがいいかもしれませんね。
(3)合併症は手術の方法によって異なる
同じ病気の手術であっても、じっさいには、いろいろな方法があります。肉眼で行われることもあれば、内視鏡で行われる場合もあり、顕微鏡を使って行われる場合もあります。手術の安全性は、それぞれ異なります。
手術の安全性という面でいえば、肉眼より内視鏡、内視鏡より顕微鏡の方がより安全だといえます。術野を拡大してみられれば、より安全ですし、内視鏡のように片目でみるよりは、顕微鏡を使って両目で見たほうが安全でしょう。
3.車いすになってしまう可能性がありますか?
これも、しばしば聞かれる質問です。もちろん、これはとても大事なことですね。
脊椎の手術をする以上、理屈の上では、手術の合併症でそのような状態になってしまう可能性は、残念ながらゼロではありません。
しかしながら、実際問題として、通常の脊椎手術でそのようなことが起きる可能性は、極めて低いと思います。一概には言えませんが、金鼻鏡を使った手術であれば、そのようなことが起きる可能性は、500から1000分の一程度ではないでしょうか?
4.手術後に疼痛などで長く苦しむことはないの?
これも、一概に答えることができません。これに関しても、手術の方法によって、大きく結果が異なると思います。一般的には、手術の侵襲が小さければ小さいほど、術後の疼痛などの合併症も少なくなります。ですので、手術を受ける際には、手術の侵襲性も考えるべき要素になります。その意味では、内視鏡は侵襲が少ないといえるかもしれません。ただ、個人的には、顕微鏡手術も、侵襲の面では内視鏡手術を大きな差はないのではないかと思っています。侵襲の少ない手術であれば、術後の疼痛も少なく、入院期間も短くて済みます。
5.さいごに
脊椎手術の合併症について、ごく簡単に、わかりやすく説明してみました。もちろん、実際には、もっと個別の合併症について詳しく説明する必要がありますが、それには、長い説明が必要になります。今回は、この程度で、そのうち、もう少し詳しい解説を、どこかでしてみたいと思います。
基本的には、必要以上に心配されることはないと理解していただければ幸いです。